ごまをするの語源には2つの説があります。
- ゴマをするとゴマがあちこちにくっつく様子
- 商人の手もみジェスチャー
それぞれの説について紹介します。
「ごまをする」の語源は2つの説がある
①あちこちにくっつく胡麻の様子
「ごまをする」は、胡麻すりをする時に胡麻があちこちにくっつく様子から、江戸時代の末期に生まれた言葉だとされています。
胡麻すりをすると、胡麻の粒が飛び散ってすり鉢や手、机などにべっとりとくっついてしまいます。
胡麻が飛び散り、あらゆる所にくっつく様子が、人に執着して媚びをへつらう様子に似ていたことから、「ごますり」という言葉が生まれたんですね。
②商人の手揉みジェスチャー
「ごまをする」には、商人が手を揉んでいる様子が語源ではないかという説もあります。
江戸時代には、商売相手に腰を下げて、恐縮したり感謝をしたり、謙虚な姿勢を見せながら両手を揉んでいる商人の姿がよく見られました。
商人が手を揉んでいるこの様子が、すり鉢で胡麻をすっている姿と似ていたことから、「ごまをする」の語源になったのではないか、と言われています。
2つの説を紹介しましたが、大言海(大槻文彦著)という国語辞典によると有力な説とされているのは、①の胡麻すりをする時に胡麻があちこちにくっつく様子です。
「ごまをする」が使われるようになったのは江戸時代から
江戸時代の嘉永3年 (1850)に、西沢一鳳という歌舞伎狂言の作家さんが、『皇都午睡』(みやこの ひるね)という江戸や道中諸国の文化風俗を京・大阪と比べて論じたものの本の中で、
と紹介しています。
嘉永3年 (1850)にすでに流行語になっていた事から、一般的に使われていたと思われます。
ごま油はどのぐらいの胡麻をすると出来るか
「ごまをする」の語源である、すり鉢で胡麻を摺るですが、ごまを摺るとゴマ油が出来ます。
ごまを摺るとと、使用した胡麻の半分量のごま油を生成することができます。
胡麻をすることで、ごま油の他に脱脂ごまという搾りかすが生まれますが、その割合は55:45だそうです。
そのため100gの胡麻をすれば、半分量である50g程のごま油が取れると考えられますね。
相手を気分良くさせる「ごますり」の類義語の雑学
「太鼓持ち」は通称で正式名称は幇間
太鼓持ちは、元々は、宴席やお座敷などの酒席で、お客様を主役に引き立てて楽しく遊びが出来、芸者さんにも好かれる状態に持って行き、お客様を喜ばせる職業のことを意味しています。
この職業、正式名称は「幇間」であり、太鼓持ちというのは通称です。
ちなみに、この「幇間」(太鼓持ち)という職業ですが、太鼓も持たないし演奏もしません。
太鼓も持たないし演奏もしないこの職業が、「太鼓持ち」の語源になったのは多くの説があり、どれが正しいのかは分かっていません。
「おべっか」は「ごますり」よりも前に使われていた言葉
「おべっか」は「ごますり」という言葉が流行る前に使われていた言葉で、現代ではあまり使われない古い言葉です。
江戸時代に残された書物の中では、『おべっかといひしが、近世、胡麻を擦ると流行詩(はやりことば)に変名しけり』と書かれており、「おべっか」から「ごますり」に変わった事が分かります。
「ごまをする」は、英語で”Apple polishing”
「ごまをする」は英語で”Apple polishing”と言います。
「ごまをする人」のことは”Apple polisher”と言うようです。
“Apple polishing”をそのまま訳すと「りんごを磨く」という意味になります。
“Apple polishing”の語源は、大人に気に入られるために、子供がりんごをピカピカに磨きあげたことからきています。
子供が大人のご機嫌取りをしていた、ということですね。
「ごまをする」は、中国語では「馬の尻をたたく」
「ごまをする」にあたる言葉として、「馬の尻をたたく」という中国の慣用句があります。中国の一部の民族のあいだでは、他人の馬の尻をたたいて「素晴らしい馬だ!」と褒める習慣がありました。
移動手段である馬は貴重で、当時の民族たちにとって財産同様の扱いがされていました。
財産のように大事な馬を褒めて、相手のご機嫌取りをしていたのです。
馬をたたいて褒めるという古い民族の習慣が、「馬の尻をたたく」という「ごまをする」と同義の慣用句を生んだのですね。