「はしたない」の語源は、まともに揃っていないという意味の「半端(はした)」に、言葉を強調する「なし」がくっついた言葉が由来です。
「はしたない」の語源は「はした(半端)」に強調接尾語の「なし」を加えたもの
はしたないの語源は「はした(半端)」と「なし」がくっついた言葉が由来です。
「はした」の意味は、まともにそろっていない状態のことで、接尾語の「ない」を付け加えたことから、形容詞になり、「中途半端なさま」を言い表します。
「はしたなし」は中途半端で収まりの悪いところから、居心地の悪い・いたたまれない気持ち・恥ずかしいという感情を示すようになりました。
そしていつしか「はしたなし」が「行儀が悪い、みっともない」と相手の不快な所作や態度を指摘するという意味になりました。
現在では「はしたない」は、女性の品のない行動を注意する言葉として使われています。
「はしたない」の「ない」は意味を強調する接尾語
「はしたない」の「ない」は接尾語と区分されますが、「ない」には4つの品詞があります。
- 接尾語の「ない」
- 形容詞の「ない」
- 補助形容詞の「ない」
- 助動詞の「ない」
接尾語の 「ない」
まずは「はしたない」にも使われている接尾語の「ない」の場合ですが、「ない」を取ったときに単語にならないことが特徴です。
接尾語の「ない」は、性質や状態などを表す語に付いて、その意味を強調し、「ない」が付いた言葉は形容詞になります。
たとえば、「みっともない」「とんでもない」「不甲斐ない」などがあり、「みっとも」「だらし」「ふがい」などの言葉は存在しません。
これらの言葉に「ない」を加えることで、1語で様子や態度を強調する表現として使用され、この場合の「ない」は形容詞の一部とされます。
「みっともない」は人が見たくないものを強め、「とんでもない」は決してそんなことはないというのを強めた言い方です。
形容詞の 「ない」
形容詞の「ない」は、物や人、事柄などが存在しないというような意味で使われます。
「元気がない」「違いはない」「是非もない」など、名詞の直後に入り、この場合の「ない」は不存在を表します。
補助形容詞の「ない」
補助形容詞の「ない」は、形容詞や形容動詞について、否定を表します。
「行っていない」「美しくない」「見たくない」「正しくない」など「ない」の直前に形容詞や形容動詞がきて、否定を表します。
この場合の「ない」の特徴として、「ない」の直前に「は」「も」を入れることができ、先ほどの「行ってはいない」「美しくもない」「見たくもない」「正しくはない」として成立します。
ちなみに補助形容詞にしか「は」「も」を入れることができません。
助動詞の 「ない」
助動詞の「ない」は、動詞や助動詞の未然形に付いて、否定を表します。
「走らない」「食べない」「言わない」など動詞に対して「ない」をつけると否定形を意味します。
助動詞の「ない」の特徴は、「ない」を「ぬ」に置き変えたときに言葉として成立することです。
「走らぬ」「食べぬ」「言わぬ」などが例として挙げられます。
・形容詞の「ない」:物や人の不存在を表す。
・補助形容詞の「ない」:様子の否定を表す。「ない」の直前に「は」「も」が挿入できる。
・助動詞の「ない」:動作の否定を表す。「ぬ」に置き換えられる。
「はしたない」が女の子だけに使われる理由
「はしたない」がなぜ女性にしか使われないのかは「はすっぱ」が関係しています。
「はすっぱ」のルーツは江戸時代で、当時はお盆の供え物として蓮の花を売る「蓮葉商い」という商売がありました。
「蓮葉」はお盆限定の一時期のものであるのと、その場限りの奉公をする女性を「蓮葉」と重ねて「蓮葉女」という言葉ができました。
その女性たちが低俗で品のない言動や振舞が多かったことから「蓮葉女」は「軽薄で態度や振舞に品がない女性」のことをいうようになりました。
やがて「蓮葉女」は「蓮葉」→「はすっぱ」となり、現在のように「軽薄で態度や振舞に品がない女性」という意味として使われています。
「はしたない」と「はすっぱ」は品がない部分で共通しており、非常に意味が似ているという理由で、「はしたない」も品のない言動をする女性という意味に変わっていき、女性にしか使われなくなりました。
ちなみに、現在では「はすっぱ=おてんば」と唱えている学者もいるため、「おてんば」も女児にしか使われない理由はいうまでもないですね。
・その場限りの奉公をする女性を、お盆限定の商売である「蓮葉商い」に例えて「蓮葉女」と呼んだ。
・「蓮葉女」は低俗で品のない言動や振舞の女性が多かったこととから、はすっぱを女性だけに使うようになった。
「はしたない」と「はした金」は同じ「半端(はした)」
「はした」は中途半端を意味する
「はしたない」と「はした金」の「はした」は、「端」に「た」がついた言葉なので、語源は同じです。
「端」の言葉は、真ん中から遠い「ふち」の部分を表すほかに、「どっちつかず」「中途半端」の意味も持ちます。
したがって、はした金は「半端な金銭」「きりがよくないお金」として解釈されますが、「はした」は同時に「ある目標に達する数字に対して不足している」ことも意味しますので、「わずかな金銭」とも解釈されるようになりました。
現代では、後者である「はした金」が「わずかなお金」として使われるのが一般的です。
算数用語で「はしたの数」というのがある
「はしたの数」は「端数」ではない
お金に代わって、数の場合だと「はしたの数」と「端数」では同じ「端」なのに、この二つは全く違います。
小学校3年生の算数の分数や小数を習う課程で「はしたの長さ」「はしたの量」など「はしたの数」という言葉が出てきます。
「はした」を簡単に言うと、1より小さい「あまった数字」や「足りない数字」のことをいいます。
ちなみに、「はした」は中学校以降の数学には出ておらす、小学校で分数や小数を理解するために用意された言葉とされています。
大人になると「はした」の存在は薄れゆくなり「端数」の方が目にする機会が多いですから一緒にされがちですね。
「はしたの数」はテープを使って教えることが多い
「はしたの数」の理解を深めるために、授業ではテープを使って教えることが多いです。
指導の目的としては、等分して分けたときに、余りや不足した数を表すのに、分数や小数が用いられることや、分数や小数の表し方について確実に身につけられるようにすることが狙いとなっています。
はしたの数を出す例題です。
1mのテープの長さを1本と基準としたとき、それぞれのはしたの長さをメートルで求めなさい。
- ブルーのテープは、オレンジテープ1本の長さに対して、ブルーテープ2本分と同じ長さですから、答えは1/2mです。(もしくは5m)
- グリーンのテープは、オレンジテープ1本の長さに対してグリーンテープ3本分と同じ長さですから、答えは1/3mです。
①は小数でも算出できますが、②は割り切れないため分数のみの表記です。
①のように小数では算出できないときは、上のテープのように等分して分数で算出します。
このように授業でテープなどを等分することで、「はしたの数」をわかりやすく解説できます。
大人には、「はしたの数」を「半端の数」と言ったほうが理解しやすいかもしれませんね。
参考文献:https://chujudays.com/fraction/
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/tea/sho/site/grade3_2/index.html
「はしたない」は鎌倉時代は恐ろしい漢字を使っていた
「はしたない」は「端無い」と漢字表記されていますが、鎌倉時代では「鬼へんに七、鬼へんに八」で書いてあったようです。
75.「はしたない」は現在「端無い」と書くが、かつては鬼へんに七、八と書くことがあった。2字は和製漢字とされ、鎌倉時代の資料から江戸時代の節用集にまで載る身近な文字だった。鬼へんに七、八と中途半端な数をつらねているのが特徴。明治以降用例はほぼ無い。あなたの手で甦らせてみては如何? pic.twitter.com/eQS3TzPDfn
— 拾萬字鏡 (@JUMANJIKYO) December 10, 2018
この2字は和製漢字であり、当時では身近に使われていたとされ、江戸時代までこの表記が使われていたようです。
もちろん現在では使われなくなり、「鬼編の漢字」と検索してもヒットしません。
なぜ、鬼へんの漢字が使われているかの理由は不明ですが、鬼へんに七、八と中途半端な数を持ってきているところがなんとも興味深いですね。