「しんどい」の語源は心労です。
元々「しんどい」は、関西方面で多く使われていた言葉ですが、いつしか全国で使われるようになりました。
心労が語源であるため、意味も心労を引継ぎ、そのまま辛いというのが一般的です。
「しんどい」の語源は「心労」から
「しんどい」の語源は「心労・辛労」から来ています。
「しんろう→しんどう→しんどい」と「心労」が形容詞化して「しんどい」になりました。
もともとは関西方面で生まれた言葉ですが、全国で使われるようになりました。
心労の意味は、「あれこれ心配して、それによる精神的な疲れ、心づかい」で、よく心労がたたると言われていますね。
辛労は、「骨折り・辛い苦労」を意味し、「心労」ともどもハードな意味を持ちます。
地方によって変わる「しんどい」
北海道
北海道では「しんどい」のかわりに方言として「こわい」が使用されます。
意味は「しんどい」と同じで「疲れた」「大変だった」「苦しい」を表します。
ちなみに「こわい」はもともと南関東や北関東地方の方言でしたが、なぜ北海道でも使われているのかは「屯田兵」が関係していると言われています。
北海道に移住してきた「屯田兵」がそれらの地域の出身であったため、北海道に広まっていき、やがて「こわい」が方言として定着していきました。
九州
特に長崎、福岡、宮崎では「しんどい」の使用頻度は低く、「きつい」が多用されています。
「はあ、仕事きつかった~」と「きつい」を「しんどい」と同じ意味で表現される方が多いです。
大阪
大阪弁での「しんどい」の使い方は、他の地域と少々異なります。
本来の意味である「疲れた」のほかに、風邪などの体調の苦しさや体の痛さ、金銭的に経済的に厳しいという意味でも「しんどい」が使われます。
例えば、
- サイフの中身を見て「しんどい!」
- ご飯の量が多くて食べている最中に「しんどい!」
など、大阪弁の場合は一言で表現するのが特徴です。
関西圏でも、特に大阪は何でも略して早口で喋ることから、自分の感情の表現も「しんどい」という一言で済ませるようになったのではないかとされています。
京都
京都で使われる「しんどい」の意味は、つらい気持ちや心情を示す意味の他に、物事に対する大変という意味でも使われます、骨折りや苦労の意味にも近いです。
たとえば標準語の「禁煙中、我慢して大変でしたね。」と京都で使う場合、「よう禁煙中は我慢したさかいしんどいわ。」になります。
岡山
岡山の「しんどい」は本来の「しんどい」と同じように心身共にくたびれた、疲れたなどの意味合いがありますが、「えらい」という方言が使用されています。
使い方としては「夏休みの工作がとてもしんどかった」を「夏休みの工作が、えらかった」という風に使われます。
「しんどい」、「つらい」、「きつい」の違い
「しんどい」「きつい」「きつい」の使い方
「しんどい」の類語で「きつい」「つらい」がありますが、自分の状況や状態で区分されます。
「しんどい」「きつい」「つらい」、この3つの言葉の違いは、
しんどい:主観的意見・自分の気分を他人に示す時に使うことば
きつい:度合いや達成の難しさを言い表す時に使うことば
つらい:何かの最中での自分の負担・苦痛を伴っているときに使うことば
と区分され、自分の状態や状況に応じて、言葉の使い方が変わります。
しんどい
「しんどい」はものごとを自分から見て、自分の気持ちを他人に示す時に使う言葉です。
「17時までにこの量の仕事をすると思うとしんどいですね。」
主観的に、仕事の量がきつくて判断したうえで気持ちや意志表示を述べているので、他の人の状況や気持ちを聞くときに「しんどい」は使用しません。
きつい
「きつい」は、物事の度合いを意味し、何かを実行するうえで、達成が難しいと予測する時に使う言葉です。
「17時までにこの量の仕事をこなすのはきついですね。」
達成するのが難しい・厳しいという表現です。
つらい
「つらい」は、何かを実行しているときの自分の負担・苦痛を伴うときに使う言葉です。
「17時までにこの量の仕事をしなくてはいけないのでつらいですね。」
仕事の量がきついため、終わらせるのが難しいから「つらい」という心身負担を伴う表現。
社会の場では、これらの言葉の使い方には気をつけるべき
先ほどの例文が社会的な文章でしたので、補足として言葉の使い方の注意を解説します。
先ほど紹介した「しんどい」は他人の状況を聞くときには使用しないため、
「●●さん、17時までにこれらの仕事を終わらせるのはしんどいですか?」は正式には不適切だとされ、
「●●さん、17時までにこれらの仕事を終わらせるのはきつい(=厳しい)ですか?」が適切です。
ちなみに、こちらの質問は人から度合いや達成の可否を聞かれているので、
「はい、きつい(=厳しい)ですね。」が相応しい応答となります。
したがって、赤字部分の箇所に「しんどい」や「つらい」などの気分や心身状態を示す言葉を入れるのは適していません。
基本的に社会の場では、仕事の状況報告は自分の感情を伴わない報告の仕方が常識となっています。
そのため、言葉の使い方を間違えてしまうと、場合によっては非常識な人だと扱われてしまうので、報告の仕方には是非とも気をつけた方がいいでしょう。
関西弁発祥の意外な言葉
「しんどい」の他にも関西から生まれた言葉がいくつかあります。
てれこ
「てれこ」は、さかさま・反対・互い違いの意味を表す。
歌舞伎界用語が由来とされ、二つの異なるシナリオを一つにまとめ、多少の関連をもたせて、舞台で一幕おきに交互に披露することを「てれこ」と言います。
そこから日常でも、ものごとの互い違いになることを「てれこ」と言うようになったようです。
ハミゴ
「ハミゴ」は、若者言葉で「はみ出された子」を略したことばで、仲間外れを意味します。
「ハミゴにせんとってや」
「あいつは昨日からハミゴになってもうた」
など自分でも他者でも使います。
ちなみに現在では「ハブられる」が一般的に使われています。
えげつない
「えげつない」は、ひどい、残酷なありさまという意味です。
「えげつない」は江戸時代に関西地方で使われた「意気地ない(いちげない)」が転じた言葉が語源とされているようです。
「いちげない」は意地汚い、厚かましい、図々しいという、やはりマイナスの意味で使用されていました。
ネットやオタクが使う「しんどい」は一味違う
ネットやSNSでの間で使用される「しんどい」は、自分の感情が興奮したときの表現として使われます。
「イケメンすぎてしんどい」
「萌えすぎてしんどい」
というような言葉を見たことあるかと思われますが、この場合の「しんどい」は精神的負担の意味ではなく、尊さや愛しさなどのニュアンスで使われています。
この表現をするときに「しんどい」が使われるようになった理由としては、対象物をみて、息もできないような苦しいくらいに愛おしいという感情・心情から生まれてきたのではないかとされています。
本来「しんどい」はネガティブな表現でありますが、この場合は名誉である表現方法として使われます。
ちなみに、自分を卑下するときに「変顔過ぎてつらい」というSNSでの痛い表現もたまに見受けられますが、このときの「つらい」は、フォロワーにそんなことないよと宥められ、自分の顔のイケ具合を再認識させるために使われる言葉とされています。
ネット用語の「しんどい」に対し、「つらたん」とは?
「●●すぎてつらい」に関連して、SNS用語でもある「つらたん」は、若者言葉とされています。
意味は単純で、本来の「つらい」と同じで、語源は2012年に流行した「きゃわたん」という言葉から来ているとされ、「つらい」と「●●たん」から合わさった若者言葉です。
ちなみに「たん」に意味はなく、言葉の響きからしてポジティブに聞こえることから、つらくても前向きになれるようにという願いが込められているようで、少し笑えてしまいますね。