いびつの語源は、おひつです。
おひつは昔は「飯櫃(いいびつ)」と呼ばれていました。
飯櫃(いいびつ)が、いびつになったのは江戸時代に遡ります。
いびつの語源は、おひつの昔の言い方からきている
江戸時代、お釜から炊き上がったご飯を、「飯櫃(いいびつ)」と呼ばれる今で言うおひつに、入れ替えていました。
そして、当時のおひつ(飯櫃)の形状が楕円形であることから、飯櫃はいつしか、楕円形のことを指すようになりました。
江戸時代、楕円形は「整った円形」ではないことから、ゆがんだ形状として解釈されるようになり、次第に、「いいびつ」が「いびつ」に変わったことが由来です。
いびつの類義語のゆがみ、ひずみとの違い
「いびつ」には類義語に「ゆがみ」「ひずみ」があります。
「いびつ」「ゆがみ」「ひずみ」は3つとも同じ漢字で、意味も殆ど一緒ですが、使う目的や使い方が多少違います。
意味 | 使い方 | |
---|---|---|
いびつ | 形状がゆがんでいるさま・整っていないさま | 形の様子を説明するときに使用 (使用例:歪な形のおにぎり) |
ゆがみ | 元々は、綺麗に整っていた物や形が、外部からの力や障害・影響によって、変わっていく様子 | 心や性格を表すときにも使用 (使用例:彼女は不道徳な彼の影響で性格が歪んでしまった) |
ひずみ | 何らかの力で変形したもののこと・ズレのこと | 作業に何らかの障害・欠陥で時間や予定にズレができることにも使用 (使用例:進行中のプロジェクトに不備が見つかり、予定していた会議の時間に歪みが生じた) |
ちなみに、ゆがみが動詞に対して、ひずみは名詞になっており、変形した様子のことを「ひずみ」といいます。
釜から飯櫃(いいびつ)にご飯を移していた理由
炊き立てのご飯を釜から飯櫃に入れ替える理由として、
- 大変熱くて重たい、お釜を食卓にまで運べなかったため
- 炊けたご飯を、お釜に入れたまま蓋をして放置おくと、焦げ付いてしまうため。
- 炊いた時の水分がご飯についてしまい、べちゃべちゃするから。
が挙げられます。
時代劇でも「おひつ」のシーンに出くわすことがありますが、こういった理由があったのですね。
また現代では、炊飯器があるにもかかわらず、上記の3つ目の理由と同じでふっくらとしたご飯を食べたいがために、プラスティック製のおひつに入れ替える人もいます。
加えて、昔の食事習慣を大事にしながら、丁寧な暮らしを楽しみたいという理由もあります。
おひつ(飯櫃)と寿司桶の違い
おひつと寿司桶は、使用目的だけでなく、実は使われている材料も違っています。
使用目的 | 素材 | |
---|---|---|
おひつ | 炊き上がったご飯を入れて保存しておくための容器 | ご飯を保存しておくという目的から「柾目(まさめ)材」という、水分を吸収して放湿作用のある木材を使用 |
寿司桶 | お寿司やチラシ寿司、手巻き寿司を作るための容器 | シャリにふっくらかんを出すため、「板目材」という、水分を逃がしにくい作用を持つ木材を使用 |
先人たちは、使う目的が違うからこそ、素材も変える必要があると判断して、素材の選別をしていました。先人たちの知恵と知識には圧倒されてしまいますね。
いびつ「歪」の漢字の成り立ち
「歪」という漢字は、人に関することからきていて、人が「不正」して「歪める」となります。
これほど、意味が一目でわかるような漢字ってほかにもあるのでしょうか?というほど、わかりやすいので、習い始めでもすぐ覚えてしまいそうです。
他に、人に関する漢字の例として、「心」が「亡くなる」で「忙しい」、「忘れる」がありますが、「歪」ほど簡単に解釈はできませんね。