割烹の語源は食材を割く、煮るという調理方法の組合せ

割烹の語源は、食材を割く、烹る(煮る)の2つの調理方法を組み合わせて出来た言葉です。

日本料理においては、食材を割く、烹る(煮る)というのが代表的な調理方法ですので、懐石料理や料亭料理、さらにはお寿司も割烹料理の仲間です。

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割烹の語源は調理方法の組み合わせ

割烹の語源は、食材を割いて烹る(にる)という調理方法が由来とされており、この二つの漢字の意味は、

  • 「割」→具材を割く、切るなど調理前の下準備のこと。
  • 「烹」→具材を焼く・煮る・蒸すなど火を使って調理をすること。

共に料理を表す漢字です。(「烹」は漢字の部首が火部であることから、料理系の漢字だとわかりやすいですね)

そしてこの二つの漢字が合わさり、料理の下ごしらえをして、火を使う調理方法を表現する言葉として「割烹」という言葉ができました。

 

「割烹」は、もともとは調理する意味でしたが、のちに高級の日本料理の意味に変わっていき、現在では「割烹」は作り立ての日本料理を提供するオープンキッチンスタイルのお店と解釈されています。

 

・「割烹」は、もともとは調理するという意味で、料理を意味する二つの漢字で作られた言葉。
・「割烹」は現在でいうと、オープンキッチンスタイルの日本料理店を指す。

 

割烹と料亭の違い

割烹と料亭は両方とも高級な料理を提供するため、一見同じものかもしれませんが、この二つは3つの面で大きく違っています。

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①座席面で違う

  • 割烹→カウンター形式のオープンキッチンスタイルが基本。
  • 料亭→座敷などの個室スタイルが基本。

割烹は、カウンターテーブルなので、板前や他の客との時間や雰囲気などの共有ができます。

料亭は客同士の親交を深めたり、接待でもてなしたりするなど、内輪で食事を楽しむのが目的としているため、外部の人間を入らせないようにしています。

 

②接客面で違う

  • 割烹→調理場と食事場のセット型で、板前や従業員との距離が近いので接客を受けられるうえに、板前が注文を受けることが多い。
  • 料亭→調理場と座席が完全に離れており、板前や従業員との距離は遠く、注文は仲居が受けるのが一般的。

板前と直接会話ができるのが割烹の最大の特徴で、メニューの食材や調理方法を聞くこともできます。

料亭は座敷に芸妓さんを呼ぶことができ、芸妓が客をもてなすため、板前や従業員が直接客をもてなす機会は少ないです。

芸妓と遊ぶ風景のドラマを一度はみたことあるのではないでしょうか?あれが料亭です。

 

③メニュー面で違う

  • 割烹→客の好みや意に沿った一品料理を作り立てで提供する。
  • 料亭→あらかじめ決められたコース料理がメインとなる。

 

先述しましたが、割烹では板前が直接客をもてなすため、客の好みを聞いて、一品料理を作り立てで提供します。

一方、料亭は会席料理など豪華なコース料理を提供するのが一般的なので、客の好みなど関係なくメニューが決められている。

(場合のよっては、予約の段階で客の好みなどを知り、それに沿ったコース料理も提供することもあります)

割烹と料亭ではいずれも高級な日本料理を提供しますが、スタイルや目的が変わってくるため、このように違いが出てくるのです。

 

・割烹と料亭は、メニューの提供、座席の形式、接客・注文スタイルなどの面で大幅に違う。
・料亭は、芸妓さんを呼ぶことができるが、割烹は芸妓さんを呼ぶことができない。

割烹第一号店は京都市祇園の「京ぎをん 浜作」

「京ぎをん 浜作」は元祖オープンキッチンスタイルのお店

日本で初めて、オープンキッチンスタイルを始めたお店は、京都市祇園にある「京ぎをん 浜作」という割烹料理店です。

 

「京ぎをん 浜作」は、昭和2年に名包丁さばきで鳴らした森川 栄氏によって創業され、客の好みに合わせての作り立ての料理の提供や、調理をライブ感覚で楽しんでもらえるといった、今までにないスタイルを始めました。

 

こうして、作り立ての料理や板前との会話をゆっくりと楽しめるという、当時では粋であることから「京ぎをん 浜作」は瞬く間に人気を博し、日本人はもちろん海外から来た有名人などをもてなす場としても「京ぎをん 浜作」が利用されてきました。

 

語源どおりの「切る」「煮る」の役割担当がいた

「京ぎをん 浜作」には先述した森川 栄氏の他にもうひとり立役者が存在しており、森川氏が下積み時代に入門先で出会った同じ門下生である「塩見安三氏」でした。

この二人は、親方から才能を認められ、若いうちから呼び名の高いお店の調理場を任されるほどの辣腕ぶりであったそうです。

そして栄氏は塩見氏の勧めもあって、昭和2年に京都の祇園冨永町に「浜作」を出店することになりました。

ちなみに「浜作」の名前は、親方である「樽本作次郎」の住んでいた場所が大阪の北浜である「浜」と作次郎の「作」から取ってできたのが由来です。

 

素早く新鮮な材料を調理して料理を提供するためにも、二人は包丁方と煮方とでおのおの役割を担っていました。

まさに二人の役割が「割る(切る)」「烹る(煮る)」の割烹の語源に沿っていました。

そしてオープンキッチンのため、栄氏の見事な包丁さばきをパフォーマンス感覚で客に楽しんでもらえたのです。

 

現在3代目「浜作」は、料理教室を開設している

平成3年に3代目当主・森川裕之氏が、「浜作」で料理教室をスタートさせていますが、お店の人気さがゆえに、日本一参加の困難な料理教室だと言われています。

教室はそのまま割烹スタイルで、3代目の森川氏が料理の手順と軽快でユニークなトークで、京料理の伝統技法と浜作ならではのセンスを学べます。

家庭でできるおもてなし料理を学べるため、生徒さんの間では好評を博しています。

 

そして、さらに「浜作」は時代に合わせて、日本全国どこでも受講が可能な会員制オンライン料理教室「クラブ・オン・浜作」も立ち上げました。

こちらのオンラインサロンでは、料理はもちろん、料理にちなんだ器や店内を彩る器や音楽まで料理から芸術方面まで幅広い領域の情報の共有ができます。

そして森川氏の独り語りもあれば、ゲストを迎え、対談をするなどの豪華で教養のある、もはや料理教室の域を超えたオンラインサロンとなっています。

 

・割烹第一号は、昭和2年に出店した京都祇園の「浜作」。
・創業当時の「浜作」では森川氏の見事な包丁さばきも楽しめた。
・現在「浜作」では3代目・森川氏による料理教室やオンラインサロンを開設している。

 

割烹着は割烹料理店で生まれた?

割烹着は、割烹料理店で生まれたわけではありません。

割烹着は、日本女子大学校(現:日本女子大学)の女子学生によって生み出されたものです。

 

1906年頃に女子学生が家庭科や理科の実験に用いるための作業着として割烹着が開発されたと言われています。

そして当時、当大学教授であった赤堀 菊(菊子)は、次々と創立された女子大に割烹着を紹介し、また赤堀 菊は赤堀割烹教場の長も兼任していたため、同時に料理教室の生徒にも割烹着を紹介していきました。

やがて、割烹着は女子大出身者や料理教室の受講者を介して、一般家庭へ浸透し、主婦にも着用されるようなりました。

 

どのタイミングで、誰が、「割烹着」と名付けたかは不明ですが、割烹から察すると、「調理者の服を保護する作業着」として解釈ができ、調理=割烹と結びつきます。

よって赤堀割烹教場の生徒に教えたタイミングで、赤堀 菊が「割烹着」と名付けたと推察できます。

割烹料理店で、板前による割烹着の着用があり得ないことから、割烹着が割烹料理店で生まれたのは考えにくく、女子学生による発明であることの方が考えやすいですね。

 

・割烹着は女子学生により編み出されたもので、当初は実験の作業着として作られた。
・当時の日本女子大学の教授であった赤堀菊が、次々と創立された女子大と兼務していた赤堀割烹教場に作業着を紹介していった。
・割烹着の由来は、「調理者の服を保護する」と予想され、調理時の作業着=割烹着となったと考えられる。

 

割烹料理、懐石料理、料亭料理の違い

割烹料理

板前が直接客に注文を取り、一品料理を提供するため、メニューは客によって変わってきます。

調理場とカウンターの一体型のため、作り立ての料理が提供されます。

 

懐石料理

最初に飯、汁物、向付が提供され、そのあと3つのおかずとして、椀盛、焼物、煮物が提供され、出す順番が決まっています。

「懐石料理」は、茶事で出される食事のため、美味しいお茶を楽しんでもらうために料理の量は少なめです。

 

料亭料理

宴席で出される料理で、あらかじめメニューが決まったコース料理であり、先にメインが出されたあとに飯、汁物、向付が出されます。

「料亭料理」は、酒を楽しむための料理となっているため、しめとして最後に飯、汁物、向付が出されます。

 

3つともメニューの順番や目的が違うのでこのように区分されますが、「割烹料理」は高級な日本料理の食事を指しますので、「懐石料理」も「料亭料理」も「割烹料理」の一種です。

他にも、「精進料理」「本膳料理」も「割烹料理」の種類に含まれます。

 

・「割烹料理」は自分の好きな料理を楽しむ食事、「懐石料理」はお茶を楽しむための食事、「料亭料理」はお酒を楽しむ食事。
・「懐石料理」も「料亭料理」も高級な日本料理として扱われるため、「割烹料理」の種類に含まれる。

 

お寿司屋さんは割烹料理屋に含まれる?

寿司屋も割烹料理店の定義にあてはまる

割烹料理店の定義に当てはまる要素がある寿司屋ならば、割烹料理屋に含まれます。

割烹料理屋は『カウンター形式で日本料理を提供してくれるお店』と定義づけられており、寿司屋にも割烹料理店と通ずる点があるからです。

  • カウンターで板前が客の注文を受けて寿司を握り、握りたてを提供している。
  • お寿司の他に、茶わん蒸し、天ぷら、お造りなど、一品料理も提供している。

 

他に高級食材を調理するといった点で、割烹料理店と大いに共通していますので、格式の高い寿司屋であれば、割烹料理店の定義を十分に満たしているでしょう。

ただし、高級な料理を提供するのが割烹料理店ですので、回転寿司のような手軽にお寿司などを食べられるお寿司屋は、和食レストランとしてみなされています。

 

寿司割烹と鮨割烹の違い

すしには「寿司」「鮨」がありますが、この二つはすしに使用している具材で変わってきます。

 

まず、「寿司」はおめでたいときに食べるものとして当てられた漢字なので、魚だけでなく他の食材を使ったすしが「寿司」となります。

好きな具材を入れて食べる手巻き寿司、稲荷寿司、チラシ寿司はその代表例で、回転寿司になってくると、ハンバーグ寿司やコーンマヨ寿司など代り映えのネタだらけです。

 

そして「鮨」は魚偏でもあるように、純粋に魚を使ったすしに使用しますが、「寿司」と比べて、あまり馴染みがありません。

 

したがって、「寿司割烹」を謳っているお店では、魚以外のネタも提供しているお店で、「鮨割烹」は魚だけのネタを提供しているお店となりますが、お店側の意図もありますので、これに沿っているとは一概には言えませんね。

 

意外な割烹料理屋が存在する

意外なジャンルのお店も割烹料理屋として出店しているお店もあります。

  • 焼肉割烹料理店:カウンターキッチンで客の目の前で、フランテなど見せ場とするパフォーマンス感覚で肉を焼く。
  • フレンチ割烹料理店:通常の割烹料理店と同様に、カウンターで具材の素材を生かしたフレンチのアラカルト(単品メニュー)を楽しめる。

こういったお店は、お箸で食べる和食と融合したフレンチが多いです。

やはり、この二つも高級食材を扱っていることから、高級料理を提供するということで、割烹料理店の仲間だと言えます。

 

このように割烹料理店の多様化があり、いろんな種類の割烹料理店が出てきたのと、今後はアイディア次第で、割烹料理店の常識を覆すような革新的で個性的な割烹料理店も出てくるのではないでしょうか?

 

・寿司屋も形態によるが、割烹料理店の定義とされる「カウンター形式で日本料理を提供する」といった条件を満たしているので、割烹料理屋に含まれる。
・最近では、寿司の他にも焼肉店や和食と融合したフレンチの割烹料理店も存在する。

 

割烹料理には静かなクレームが存在する。

割烹料理は客が好きなものを注文できるうえに、一品料理を提供するので、嫌いなものであったり、食べすぎであったりするなどの食べ残しはあまりありません。

料理をきれいに食べきることで、板前に「大変美味しかった」と静かに伝えられます。

 

しかし、一概にきれいに食べきるのが和食のマナーではなく、場合や状況によっては、食べ残しもマナーになることもあります。

たとえば、焼き加減がよくなかったり、料理が口に合わなかったりするなど、料理の調理具合に不備があるときは、そっと料理を残せば、板前に「美味しくなかった」とメッセージ代わりになるからです。

そして残された料理を板前が察し、改善するという運びになります。

 

こういった趣のあるお店では、直接クレームを言うのではなく料理を残すことで、お店の雰囲気や空気を壊さないように、静かなクレームが存在しています。

 

・和食のマナーとして、場合によっては「食べ残し」も良いとされ、それが板前やお店のためにもなる。
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