こじつけの由来・語源は、古代中国の出来事の「故事」を動詞形にした「故事つける」がもう一回名詞になったものです。
では、いつごろから、「故事つける」から「こじつけ」になったかを紹介します。
こじつけの由来・語源は「故事つける」
こじつけの由来・語源は、古代中国の出来事の「故事」です。
「故事」という言葉を「故事つける」と動詞形にしたものが、再度名詞になったものが「こじつけ」です。
「故事」がこじつけの由来・語源といっても、故事の中に書かれている事が由来になっているわけではありません。
あくまで「故事」という言葉そのものがこじつけの由来・語源です。
故事とは、古典文献や口承による昔のできごと、いわれのある事柄のことを意味し、「故事付ける」とは、昔の言い伝えに、自分なりの理屈をつけて、無理やり関連付けることをいいます。
ちなみに、昔は、「こじつけ」を「故事付ける」と動詞として使用されていました。
江戸時代の能や浄瑠璃などの文献では、「こじつけ」がすでに使用されていましたので、江戸時代あたりから「こじつけ」という言葉が生まれたと考えられています。。
故事成語とことわざの違い
故事成語とことわざはどちらも教訓ですので、心がけておけば人間的に成長・飛躍するなど、今後の人生で、大いに役に立つということでは共通しています。
しかし、故事成語とことわざとでは、時代背景の違いと、できた言葉が中国か日本のどちらで生まれたかによって区別されます。
時代背景 | 言葉が出来た国 | |
故事成語 | 古代中国の出来事 | 中国 |
ことわざ | (時代問わず)日本の生活や習慣 | 日本 |
「故事成語」とは、古代中国の出来事をもとに、教訓としてつくられたものをいいます。
例として、「矛盾」「四面楚歌」「登竜門」などが有名で、中国から日本に伝来し、今や当たり前のように使われています。
「ことわざ」とは、日本で生活や習慣の中で生まれた短い格言のことです。
故事成語とは違って、時代にかかわらず、起きた出来事を教訓として作られ、誰にでもわかりやすい言葉で表現されたもので、幅広い年代層に知れ渡っています。
例として、「犬も歩けば棒に当たる」「釈迦に説法」「三つ子の魂百まで」など有名なものがあります。
ことわざ:日本の生活や習慣で生まれた知恵をもとに、わかりやすい言葉で表現されたもの。
ちなみに「ことわざ」と区別がつきにくい「慣用句」は、日ごろの行動や習慣を省略した言い方なので、教訓ではありません。
例として、「耳にタコができる」「足が棒になる」「油を売る」など、聞いたことのある言葉が挙げられます。
意外にもこじつけで生まれた言葉
師走
師走には「僧侶や偉い人が走り回る」が語源と思われているのが一般的ですが、実は色々な語源が存在するため、こじつけで作られた言葉と定義されています。
- はるか昔に「十二月」を「シハス」と呼ばれていたため、後から「師走」という当て字にしたことから。
- 年が果てる「としはつ」から「しわす」に変わったことから。
- 一年の最後にものごとをやり切る「為果つ(しはつ)」から「しわす」になったことから。
上の様に実は複数の諸説がありどれも確証がないため、師走はこじつけとして定義されています。
一つ返事
「一つ返事」は、「二つ返事」の本当の意味をわかっておらず、こじつけによって生まれた言葉です。
語源は、「二つ返事なんて、相手に対して無礼!返事は1回が常識でこれこそが礼儀だ!」と、先人の概念によって、できた言葉とされています。
これがいつの間にか世間に流布していき、当たり前のように使われてきました。
「一つ返事」は、「二つ返事」に対しての、こじつけによって生まれた言葉ですので、厳密には正しい言葉ではありませんし、本来、「一つ返事」という言葉自体存在しません。
社会の場面では、日本語や言葉のプロの方もいますので、「一つ返事」という言葉は使わない方が無難です。
ちなみに、「二つ返事」の本当の意味は、
「お願いされたものに対して、快諾する。喜んで引き受ける」という意味です。
この機会に、覚えておきましょう。
ステレオタイプ(意味:物事のやり方が決まりきっていること・先入観)
ステレオタイプは音響の「ステレオ」が由来だと思われていますが、これもこじつけ言葉です。
ステレオタイプの本来の語源としては、ステロ版(鉛版)印刷からきていて、ステロ版で印刷すると、型抜きで作られたかのような、同じ仕上がりになることから「ステロ」説の史実があります。
音響のステレオが語源という誤りは、世の中に出回っている音響スピーカーが2つペアであることが多いことから、そこから「先入観・当たり前のやり方」を意味する「ステレオタイプ」が生まれたとされています。
どこで解釈違いが生じたかは、定かではありませんが、「ステレオタイプ」の言葉が「ステレオ」来ているとして、一部の間でこじつけされています。
ちなみに、こじつけで生まれた語源を民間語源といいます。
確証や根拠がないのに、無理やり関連付けて生まれた言葉は、「民間語源」に分類されます。
他にもたくさん「民間語源」があり、中には「えっ!これも?」という言葉もあるので、興味があれば、調べてみてください。
「風が吹けば桶屋が儲かる」も単なるこじつけ!
「まったく何の関係もないところから、意外なところに影響が出る」という意味を持ちますが、ことわざのルーツは江戸時代にまで遡ります。
「風」と「桶屋」は一見、全くの因果関係はありませんが、江戸時代では下記のように順立てて、強引に「風」と「桶屋」に紐づけられています。
・強い風が吹いてしまうと、砂ぼこりが立ってしまう。
・砂ぼこりが目に入ってしまい、失明を引き起こす。
・失明で職を失い、三味線を手なずけようとする(江戸時代では、三味線弾きが、障がい者の主な職種でした。)
・三味線の材料として、猫の皮が必要となり、たくさんの猫を捕獲する。
・猫がいなくなり、ネズミが生き延び、どんどん増える。
・ネズミに桶をかじられ、桶を新しく買い替えようとする。
・桶の修理や、買い替えの需要が増え、桶屋が儲かる。
ここまで突き詰めていくと、ことわざが先人のこじつけであることが、見事に手に取ってわかるでしょう。
現に、このことわざが「可能性の低い因果関係を無理やり関連づけたこじつけ」だと、一部では指摘されています。