ナルシストの語源はギリシャ神話のナルキッソスという美少年の名前です。
では、ナルキッソスとは一体どんな人物だったのか、紐解いていきます。
ナルシストの語源はギリシャ神話に出てくる美少年の名前
「ナルシスト」の語源はギリシャ神話に出てくる「ナルキッソス」に由来します。
ギリシャ神話では美少年ナルキッソスが、女の姿をした樹木の精霊・エコーの求愛を拒絶したのがきっかけで神から罰を受けてしまいます。
その罰とは水面に映った自分の姿に恋をしてしまうというものであり、「ナルキッソス」は水面に映った自分を美しい妖精だと思い込んで、自惚れてしまいました。
このことから自惚れや自己陶酔のことを「ナルシズム」、そのような人を「ナルシスト」と呼ぶようになりました。
水仙の花の由来も「ナルキッソス」
実は、植物の水仙も「ナルキッソス」が由来しています。
水仙の学名は「ナルキッソス」といわれ、こちらの由来は言葉通り、ギリシャ神話「ナルキッソス」です。
先述の話には結末があり、自分に恋い焦がれてしまった「ナルキッソス」は水辺に映った自分にキスをしようとして溺死してしまい、水仙の花になったといいます。
水仙は水辺をのぞき込むように咲くといわれ、その様子が「ナルキッソス」の姿と重なることから、水仙の学名が「ナルキッソス」になりました。
ちなみに水仙の花言葉も「自己愛」や「うぬぼれ」といったナルシストを意味する言葉で、つながっていますね。
それにしても亡骸が灰ではなく、花になるというのもなんともロマンチックですね。
美しい自分が大好きなナルキッソスらしい美しい終わり方をしたのではないでしょうか。
ナルシスト、正しくはナルシシスト
「ナルシスト」は間違いで「ナルシシスト」が正式名称
「ナルシスト」は「Narcisse(ナルシス)」と人を意味する「ist(イスト)」が合わさったNarcissit(ナルシシスト)が正式名だとされています。
「ナルシシスト」が日本に伝わった際に、いつしか「ナルシスト」に変わっていきました。
今やメディアでも普通に「ナルシスト」が使われており、辞書でも出版社によっては正式名称の「ナルシシスト」ではなく、「ナルシスト」を起用しています。
他にも言いづらい言葉として「エステティシャン」もありますが、こちらも「エスティシャン」と言いやすい言葉に変わっていきました。
言葉も定着してくると、正式名称が忘れられていくという悲しい実態があるのです。
アメリカではナルシシストの解釈の仕方が違う
アメリカの「ナルシシスト」は、他人を巻きこんで自分が優位に立つという意味で解釈されます。
アメリカで言う「ナルシシスト」は、自己肯定感が低いがために自信がなく、他人を利用して評価を上げようとしたり、称賛を浴びたりして、自分を良く大きく見せようとする人のことを指します。
ひどい場合だと、「ナルシシスト」は自分の正義を貫くために、他人を平気で傷つけたり、精神を破壊してしまったりするケースもあるそうで、「ナルシシスト」が「人格障害者」として扱われることもあります。
いっぽうで日本の「ナルシシスト」は、自分に満足している分、他人を巻き込むことはありませんので、アメリカの「ナルシシスト」の解釈は少し深刻ですね。
ギリシャ神話が語源となっている言葉
へべれけ
「へべ」はゼウスとセーラーの間に生まれた女神の名前で、「へべ」は神々の宴の際にお酌をしていて、「へべのお酌」が「ヘベ・エリュエケ(Hebeerryk)」とギリシャ語で表現されました。
「ヘベ・エリュエケ」が「へべれけ」に転じ、現在のように「意識もなくなるほど、ひどく酔ってしまう」という意味で使われています。
「へべれけ」は、言葉のイメージからして神秘的なギリシャ神話と関係なさそうですが、美女がお酌すると勧められるがまま、たくさん吞んでしまうという点では、リンクしていますね。
トロイの木馬
コンピューターウィルスの一種である「トロイの木馬」は、ギリシャ神話の戦争の戦略がもとになっています。
トロイや戦争でギリシャ軍が、敵を欺くために木馬に隠れて城内に侵入し、トロイヤを奇襲したといわれています。
そこから、悪質なサイトが安全を装って、そのサイトからファイルをダウンロードし、実行をしてしまうとパソコンにウィルスが侵入し、破壊してしまうことから「安全を装って侵入する(安心だと思って受け入れる)」点が非常に似ているので、この種類のウィルスは「トロイの木馬」と名付けられました。
パニック
災害や事故などで混乱を意味する「パニック」は、ギリシャ神話のいたずら好きの牧神「Pan(パン)」に由来します。
パンは普段は陽気な性格なのですが、大好きな昼寝を邪魔されると、半狂乱になってしまい、怒り声を荒げ、いさかいもなく人々や動物、さらには神々までも恐怖に陥れてしまいます。
この伝説から「恐慌状態」を意味するとして「パニック」が生まれました。
ちなみ、「ピーターパン」は「パン」をモデルとしており、起用の理由としては、おそらく些細なことで怒ってしまう・稚拙なところに注目し、永遠の少年を意味する「ピーターパン」が生まれたのだと考えられます。
ギリシャ神話から生まれたことわざ:「チャンスの神は前髪しかない」
ギリシャ神話が語源のことわざで、「チャンスの神は前髪しかない」ということわざがあります。
「チャンスの神は前髪しかない」ということわざは、好機は来たそのときに掴むものであることを意味します。
何かをやると決めたら、ためらわず思い立ったときに実行しましょう(思い立ったが吉日)という前向きな表現で、ビジネスの格言や教訓でも有名です。
この言葉のモデルはギリシャ神話の「カイロス」で、全能の神ゼウスの末っ子です。
「カイロス」は美しい顔立ちをしていましたが、前髪が長くて、後ろ髪は生えてなかったという非常に特徴的な頭髪をしていました。
「カイロス」と出会った人は、つかまえやすいように前髪を垂らしていますが、後ろから追いかけてきた人には、髪を掴めないよう後ろ髪がないと言われています。
このことから「カイロスの前髪」は「チャンス」と格言化され、「チャンスの神は前髪しかない」とことわざになっていきました。
チャンスは一瞬で来るもので、逃してしまうと時は戻せないので、掴めないのだと言い表していますね。
普段の何気ない日常の中にも「チャンス」が眠っているかもしれませんが、いつどこで「チャンス」が巡ってくるかは、わかりません。
ただ、自分の思考次第では「ピンチ」と思うような出来事が「チャンス」になってしまうこともあるので、要は自分次第で「チャンス」を掴むことができます。
自分の思考と感度を常に高めておけば、どんな時でも「チャンス」を感じ取り、掴めるのではないでしょうか。