得意なものという意味合いで使われる十八番について、最も有名な由来としては歌舞伎の得意演目が18種あったからという説があります。
また十八番を「おはこ」と読む由来も歌舞伎に縁があるという説もあります。
そのため、十八番は歌舞伎が由来というのが有力な説であるとされていますが、十八番を「おはこ」と読む由来も他にも説があり、十八番そのものにも実は他にも説があるので、実のところ、確定はしていません。
十八番=得意なものという由来は3つの説がある
歌舞伎十八番説
天保3年(1832年)、七代目市川団十郎が、歴代の団十郎が得意とする芸を、演目から18種を選定して「歌舞伎十八番」(現代で言うとベストアルバムみたいなもの)と呼んだことから、「得意な物」という意味で「十八番 (じゅうはちばん) 」が使われるようになりました。
阿弥陀如来の十八願説
阿弥陀如来が修行中に、四十八願の誓いを立てているとされています。
48種の誓いの中でも18番目の誓い「生きているものをすべて救う」が最も重要な願いで、優れていたことから、「十八番 (じゅうはちばん) 」が「得意な物」の代名詞として使われるようになりました。
武士が嗜む武芸説
武芸18種目または武芸十八番から由来とされています。
武芸とは、弓術・馬術・短刀術・居合術などがあり、武士が必須とする武術のことを指します。
武士が必要とされる教養が18種もあったため、この説は「十八番 (じゅうはちばん) 」が単に得意な物のことだけを指すのではなく、「多才」という意味も含まれ、使われるようなったとされています。
このように、十八番には3つの説があり、「十八番」が「おはこ」と呼ばれるようになったのが歌舞伎由来説が有力とされてはいますが、どれが正しいかという結論には至りません。
十八番を「おはこ」と読む由来
高価なものを箱に入れていた説
江戸時代では、鑑定士が高価な骨董品や書画などを箱に入れて、それらを真作だと証明する「箱書き」(鑑定士の署名)を添えていました。
それにちなんで、「お墨付きの芸」=「お箱入り」ということから「御箱(おはこ)」と呼ばれるようになりました。
台本を箱に保管していた説
「歌舞伎十八番」の台本を箱に保管していたという説もあります。
お家芸でもある「歌舞伎十八番」の台本は、いわば市川家にとっては家宝同様で、歴代の当主により高級な箱に、丁寧に保管されていたことが由来で、いつしか十八番が「御箱(おはこ)」と呼ばれるようになったとも言われております。
ちなみにこちらの説が有力だとされています。
「十八番」と「お家芸」のちがい
十八番とお家芸の違いは、得意とする物が個人か集団で区別される傾向にあります。
十八番 | 個人で得意とする物 |
お家芸 | 特定の家に伝わる独特の芸のこと。 何かしらの団体で、最も得意とする分野、本領発揮できる分野のこと。 |
このように「十八番」と「お家芸」は確かにどちらも「得意な物」を指していますが、「個人で得意な物」か「集団で得意な物」で区別される傾向にあります。
たとえば、
「あの歌はあの人の十八番だから、次のカラオケ大会で聴くのが楽しみだ」
「オリンピックで日本の柔道が圧倒的に強いのは、日本のお家芸だからだ。」
と日常会話などで聞き馴染みありませんか?
いつしか、「十八番」は個人、「お家芸」は団体という風に分かれて、会話でも自然にこのように使い分けされていますね。
「お家芸」は上品な言葉なのに悪いイメージしかない?
また「お家芸」は、「十八番」と違って、皮肉を言う時にもよく使われがちです。
「国会では政治家のお家芸である牛歩戦術が見られた」
「圧力がかった事実隠蔽は●●のお家芸である」
など、このようにメディアでは「お家芸」を皮肉の意味で使っていて、「お家芸」が悪いイメージといして、世間に浸透してしまったからです。
対象のものを、からかう時に「お家芸」という言葉が使われますが、本来、マイナスやネガティブの場面で使用される言葉ではありません。
どうして「お家芸」のような上品な言葉が、からかう時に使われてしまうのかは、おそらく現代ではきれいな言葉がかえって相手に失礼だという風潮からだと推察ができます。
たとえば、
「今日もお勉強されるのですか?」
「さようでございますか。」
「あちらまで取りに行ってくださる?」
かつてでは、当たり前のように使われてきたこのような丁寧語は、現代では聞き慣れない・使い慣れていないがために、嫌味や皮肉に聞こえてしまい、日常でそうした傾向が根付いてしまっているからなのです。
自分が意図していなくとも、必要以上の丁寧語は、社会でも失礼にもあたりますので、「お家芸」など丁寧語な言葉を使う時は、想像力を働かせて、表現や言い方に気をつけなくてはいけませんね。