口説くの語源は「くどい」。恋愛の意味で使われ始めたのは室町時代から

口説くは、現在では異性の相手に自分の思いを受け入れてもらえるよう説得する意味合いで使われる事が多いです。

ただ、口説くの元々の語源は、恋愛とは真逆でむしろ嫌な感じの「くどい」という言葉です。

では、どのような変遷を経て、口説くは、嫌な感じから良い感じの意味の恋愛の意味に変わっていったかを紹介します。

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口説くの語源は「くどい」

口説くの語源は、「くどい」や「くどくど」という言葉から来ています。

擬態語である「くどくど」や形容詞の「くどい」を動詞化して、口説くという言葉ができたという説があります。

「くどく」は平安時代末期頃から見られる言葉です。

 

しかし、平安時代末期頃は、しつこく言うという意味や祈願する意味で使われていました。

女性を口説くという意味で「くどく」が使われるようになったのは、室町時代頃に庶民の間からであると言われています。

口説くという言葉の意味の変遷は、当時の恋愛事情が関係しています。

 

平安時代の恋愛事情

平安時代では、「くどく」はまだ女性を口説く意味では使われていませんでした。

庶民と貴族といった上流階級とでは恋愛事情や恋愛模様は多少異なりますが、共に男性が女性を口説くという事自体がありませんでした。

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平安時代の庶民の恋愛事情

恋愛までの発展が現代では考えられないほど急展開であり、口説くという行為を必要としなかったため、「くどく」はまだ女性を口説く意味では使われていませんでした。

 

 

平安時代の上流階級(貴族)の恋愛事情

平安時代の貴族の女性は、人前に顔を出すことがほとんどなかったので、男性は知人や女中から紹介を受けて女性と知り合いになるのが一般的でした。

そこで気になる女性ができたら、気持ちを和歌に添えて手紙を送っていました。

受け取った女性はその歌が上手いかどうか吟味し、手紙の送り主がどのような人物か調べた上で、男性に手紙を返します。

男女が直接対面せず、和歌のやりとりのみで気持ちを伝えあっていたため「くどく」必要がなかったことが背景にあります。

ちなみに貴族の間でも自由恋愛は存在していました。

 

室町時代の恋愛事情

室町時代になると庶民の間で口説くという行為そのものが生まれ、そして「くどく」が現代と同じように女性を口説く意味で使われるようになります。

室町時代の庶民の恋愛事情

室町時代の庶民たちには、異性に気持ちを伝える機会が増えるようになりました。

室町時代頃から盆踊りが全国各地に広がり、若者は一年に一度のビッグイベントである盆踊りの歌や踊りの駆け引きで、恋愛活動を行うようになったのです。

この中で、しつこく言うという意味や祈願する意味で使われていた口説くが、現代のような異性の相手に自分の思いを受け入れてもらえるよう説得するという意味で使われるようになったと言われています。

 

ちなみに、盆踊りの中で歌われる歌は「口説き」と呼ばれています。

この盆踊りの口説きは、庶民によって創作された、農民の労働や恋愛を小唄としたものが原型で、室町時代末期に隆盛期に入りました。

盆踊りの歌を意味する「口説き」の中で、恋愛を小唄にしたものが恋愛活動で主に使われたため、「口説く」が現代のような異性に気持ちを伝えるという意味で使われるようになったという可能性もあるのではないかと考えられます。

 

室町時代の上流階級(武士)の恋愛事情

室町時代に入ると、それまで気持ちを伝えるために使われていた和歌が衰えていきました。

乱世の世へ移り変わるなか、武家社会では政略結婚が主流となる、戦国時代を迎えたからです。

家や親に勝手に決められ、お互い顔も見た事がない相手といきなり結婚するわけで、気持ちを伝える機会すら、なくなってしまったのです。

 

以上のことから、上流階級社会においては「口説く」という言葉は発展せず、庶民の中で「口説く」という言葉は、「くどい」というマイナスなイメージの言葉から、恋愛に使われるプラスのイメージの言葉へと変化していきました。

 

口説く以外の恋愛にまつわる言葉の語源

恋の語源

もともと恋という字は「戀」と書かれていました。

この「戀」という字は、糸がもつれて絡まってしまった様子を表しており、異性への思いが募り心が乱れてしまった様子を表したとされています。

「戀」という字は簡略化され、今の「恋」という字になりました。

告白の語源

告白の「白」という字は、白状するや気持ちを伝えるという意味があります。

「白」い光によって、見えなかったものが見えるようになることから、気持ちを明らかにすることを「白」という字で表すようになりました。

気持ちを明らかにした想いを告げるという意味から、「告白」という言葉が生まれました。

振る・振られるの語源

振る・振られるの語源は、振袖から来ています。

昔は、女性が男性の求愛に直接言葉で返答することは、はしたない事だとされていました。

そのため、女性は振袖の振り方で男性の求愛に返答していました。

袖を左右に振ると好き、前後に振ると嫌いという意味があります。

現代の「振る・振られる」は、振袖を振る様子からきた言葉です。

 

口説くが恋愛だけでなく他の場面でも使われるようになった理由

恋愛以外でも、他の場面で「口説く」を使うことがあります。

ビジネスの場を例にすると、「口説く」対象は客になります。

商品を買ってもらうためには、客のもとを足繁く訪問し、商品の良いところを宣伝して好感を得る必要があります。

その行為が、恋愛における「口説く」行為と似ていることから、ビジネスの場でも「口説く」が使われるようになりました。

恋愛以外でも、言葉で相手の承認や理解を得るという意味で「口説く」が使われます。

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