最近では、女性の客室乗務員をスチュワーデスと呼ぶことはなくなりましたが、スチュワーデスの語源は執事や世話役を意味するスチュワードの女性形が語源とされています。
スチュワーデスの語源を豚小屋の番人とする説を唱える人もいますが、これは誤りです。
スチュワーデスの語源は執事や世話役の意味のスチュワード
スチュワーデスの語源は、執事や世話役の意味のスチュワードと、豚小屋の番人という意味を表す造語の説と2つの説があります。
前者は、英語の「steward(スチュワード)」の女性形「stewardess」が語源とされています。
「steward」とは、紹介した通り、元々、執事や世話役の意味ですが、これが転じて、飛行機の乗客へ給仕する女性について「スチュワーデス」と呼ぶようになったのではと考えられています。
一方、後者の豚小屋の番人説について、古代英語で豚小屋は「stig」、番人は「weard」と言いました。
それに加え、女性を表す接続語の「ess」がくっつき、「スチュワーデス」が生まれたというのが前者の説です。
大切な家畜を世話する仕事が転じ、飛行機のお客様の世話をする人を「スチュワーデス」と言うようになったという考えです
「スチュワーデス」の語源は、前者の「スチュワード」とする説の方が説明も付きやすく、濃厚な説とされています
・執事(スチュワード)が女性形になったという説がスチュワーデスの語源として濃厚
スチュワーデスと呼ばなくなった理由
昔は、日本で「スチュワーデス」という言葉が広く知れ渡っていましたが、ある2つの出来事がきっかけであまり使われなくなりました。
きっかけは「Coffee, Tea or Me?」
「スチュワーデス」と呼ばなくなった理由の一つに、元スチュワーデスのアメリカ人女性2人の体験談が基となった「Coffee, Tea or Me?」という本が関係しています。
1968年に出版された「Coffee, Tea or Me?」は「スチュワーデス」のスキャンダラスな内容が話題となりました。
これに目を付けた、航空会社は「スチュワーデス」を広告に起用し、女性のお色気を表現するような広告が増え始めました。
「スチュワーデス」の広告が増える中、これは性差別ではないかという声があがり始め、「スチュワーデス」という言葉そのものに性差別を感じるようになりました。
ポリティカル・コレクトネス運動の高まり
ポリティカル・コレクトネス運動とは、アメリカで1980年代後半から始まった、社会的公平・中立を訴える運動です。
ポリティカル・コレクトネス運動を通して、黒人は「black」ではなくアフリカ系米国人「African American」と呼ぶなど、人種差別や性差別のない表現が積極的に使用されるようになっていきました。
この運動は、語尾の「デス」に女性表現が含まれている、「スチュワーデス」という呼び方にも影響を与え、1970年代の終わり頃には、「フライトアテンダント」という言葉に変わっていきました。
・差別のない表現が好まれ「フライトアテンダント」に変わった
世界初のスチュワーデスは看護師
世界で初めて誕生したスチュワーデスは看護師だったと言われています。
1930年以前、航空業界は現代と異なり、男性中心の業界でした。
しかし、看護婦のエレン・チャーチは航空業界で働く夢のため、「飛行機の機内では、看護師が役立つ」と熱心にアピールをし続けました。
その結果、1930年にエレン・チャーチはボーイング・エア・トランスポートという航空会社に女性初の客室乗務員として採用されました。
・初の女性客室乗務員は看護師のエレン・チャーチ
日本ではエアガール、エアホステスと呼ばれていた時代もある
「スチュワーデス」は、日本では昔「エアガール」や「エアホステス」とも呼ばれていました。
戦前の1931年に、民間の航空会社であった東京航空輸送で女性の客室乗務員の採用試験が実施されました。
この時の求人で女性客室乗務員のことを「エアガール」という呼称で募集していたため、「エアガール」という言葉が使われるようになりました。
発祥は分かりませんが、「エアガール」と並んで「エアホステス」という呼称もあり、日本でも昔使われていたようです。
タイでは現在でも客室乗務員のことを「エアホステス」と呼ぶようです。
・タイでは現代でも「エアホステス」と呼んでいる
キャビンアテンダント、CAは和製英語
客室乗務員を指す「キャビンアテンダント」や「CA」は日本で作られた和製英語です。
キャビンアテンダントは元々JALの社内用語
「キャビンアテンダント」はそもそも、JALの社内用語として使用されていた言葉です。
JALでは当初、客室乗務員を「Cabin Crew」と呼んでいましたが、短縮形の「CC」がパイロット「Cockpit Crew」の同じになってしまうため、「キャビンアテンダント」という用語が誕生しました。
JALが社内で採用していた「キャビンアテンダント」という言葉が、ドラマや映画などを通して世の中に広く知れ渡るようになりました。
海外の客室乗務員の呼び方
日本では、「CA」・「キャビンアテンダント」と呼ぶことが多い客室乗務員ですが、海外では違った呼称があります。
アメリカで主要な呼び方は「フライトアテンダント(Flight Atendant)」で、その他の英語圏では「キャビンクルー(Cabin Crew)」と呼ばれることが多いです。
「キャビン(Cabin)」には、「小屋」や「船の客室」などの意味が強いため、「フライトアテンダント」という単語が浸透しているアメリカで「キャビンアテンダント」を使うと、通じないことが多いそうです。
日本でも航空会社によって客室乗務員の称し方が違う
日本国内でも航空会社によって客室乗務員の呼称は異なっています。
JALでは、1996まで「スチュワーデス」という職位がありましたが、現在では「客室乗務員」「キャビンアテンダント」「CA」など複数の称し方があるようです。
ANAで「スチュワーデス」という言葉が使用されたのは1987年までで、男女雇用機会均等法の施行に合わせ、「客室乗務員」や「CA」という呼び方に変更されました。
その他日本の航空会社では、ジェットスタージャパンで「キャビンクルー」、バニラエアでは「フライトアテンダント」など、会社によってさまざまな呼称があることが分かります。
・日本では「CA」、「客室乗務員」が広く使われている
3月5日はスチュワーデスの日
3月5日はスチュワーデスの日とされています。
日本の航空業界で初めて女性客室乗務員(エアガール)の採用試験が実施されたのが1931年の2月5日で、一月後の3月5日に試験結果が発表されました。
試験合格者は140人中3人だけだったそうで、今も昔も「スチュワーデス」、「CA」は人気の高い職業だということがよくわかります。
・客室乗務員の職業人気は今も昔も高い