二足のわらじの由来は博打打ちを岡っ引きにして江戸の治安を守らせた

二足のわらじの由来は、江戸時代、犯罪者である博打打ちを、犯罪者を取り締まる岡っ引きにしたことです。

犯罪者を取り立てて、江戸の町の治安を守らせたのは、江戸時代の奉行所のある事情が影響しています。

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二足のわらじの由来は、博打打ちが岡っ引きになって同業者を捕らえることから

「二足のわらじ」という言葉は、博打打ちに、同業者を取り締まりさせるという荒業から生まれたのが由来だとされています。

江戸時代、奉行所だけでの賭博の取り締まりに限界であることから、処罰対象であるはずの「博打打ち」に、十手(手錠みたいなもの)を差し出し、協力者として同業者を取り締まるといった「岡っ引き」の役割を果たさせていました。

一人の人間が両立し難い、相反する仕事を受け持つことから「二足のわらじ」の言葉が生まれました。

 

「わらじ」が使われた理由としては、一人の人間が二足のわらじを重ね履きできないのと、江戸時代では「わらじ」が定着していたからだとされています。

 

補足として、「二足のわらじ」は「異なる性質の職業を掛け持つ」ことで、例えば医者と芸人のような全く関係のない2つの職業を行うことを指しますので、似たような職業を掛け持つ意味では使われません。

 

二足のわらじのニュアンスの変化

「二足のわらじ」のニュアンスは時代とともに、イメージが変わってきています。

言葉が生まれた当時の意味は、「本来あってはならない、立場的に無理な職務を掛け持つこと」で良い意味で使われる言葉ではありませんでした。

昨今でも、異なった業種を並行して掛け持つという意味で使われていましたが、「どっちつかず」「中途半端」といった、やはり悪いイメージとされていました。

 

しかしここ最近では時代の変化もあり、最近では副業や起業を促進している企業も増え「二足のわらじ」が重宝されつつあります。

「二足のわらじ」を行うことで、固定観念がなくなり、斬新なアイディアも生まれると見込まれたり、個人のスキルや能力も高まったりするなど、相乗効果を生み出すことが企業側の狙いなのであり、メリットでもあるからでしょう。

このように、「二足のわらじ」の意味合いは「中途半端」から「本腰」へと尊敬の対象になるようなニュアンスへと変わっていきました。

・「二足のわらじ」は言葉が生まれた当時は、「どっちつかず」「中途半端」という意味で使われていた。
・現在では、個人のスキルや能力も高まる効果から、良い意味で使われる事が多い。
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江戸時代、二足のわらじを履いていた岡っ引きは3千人くらい

江戸中期の場合ですが、岡っ引きと下っ引き(岡っ引きの子分)を合わせて3000人程度いたとされています。

その中でも、岡っ引きのほとんどが元犯罪者であったようです。

理由としては、江戸中期の人口約60万人に対し、南北の奉行所を合わせても、同心が30人程度しか駐在せず、とても手が回らない状態でした。

さらに賭博など闇の事業を探るには、その情報に精通した人間が必要であったのもあり、同心が捕らえた罪人の中から見込みのありそうな人間を選んで、岡っ引きとして協力させていました。

その際に見返りとして、罪人を無罪放免としていたこともあったようです。

岡っ引きは、密偵・情報提供や罪人の探索・捕り物などの仕事を行い、奉行所にかなりの貢献をしていたとされてました。

現在に例えると刑事ドラマにある、元犯罪者が「情報屋」になり、警察の手助けをするようなものです。

・江戸時代、犯罪者を取り締まる同心は、人口60万に対して、わずか30人ほど。
・同心を助けるために、3000人の岡っ引きが存在。

 

岡っ引きが「二足のわらじ」になってしまうワケ

岡っ引きは、現在で言うとアルバイトのようなポジションであるため、給料はお小遣い程度しかもらえず、とても岡っ引き1本だけで生活は成り立ちませんでした。

そのうえ、下っ引きの給料は親分である岡っ引きの儲けから出していましたので、岡っ引きの手取りはさらに少なかったように推測ができます。

そのため一部の岡っ引きは、足を洗って、大工さんや町の用心棒など、岡っ引きとは別に職を掛け持つようになり、まさに「二足のわらじ」で生計を立てていました。

 

また罪人から足を洗わず、岡っ引きであることを利用して、町民を恐喝するなどしてお金を巻き上げていた岡っ引きもいたとされています。

 

草履や足袋ではなく、わらじの理由

わらじ

 

草履

江戸時代、履物と言えば、わらじ以外に草履や足袋も一般的でした。

そんな中、「二足の草履」や「二足の足袋」ではなく、「二足のわらじ」としたのには理由があります。

 

「わらじ」の方が、草履や足袋よりも「定職」を例えるのに適しているからです。

「草鞋」を履く際は、足元を固定するために、ひもを締める手間と時間がかかりますが、安定した長距離・長時間の歩行が可能です。

 

一方、安全に作業を行う目的として使われるのが「草履」です。

また草履や足袋、雪駄は鼻緒に足の指をひっかけるだけですので、簡単に履けてしまう分、長時間・長距離の歩行には向いていません

ちょっと外出するくらいの普段使いとして、使用されるのが「草履」や「足袋」などです。

 

定職の「長時間、安定している」という意味では、簡単に着用ができる「草履」「足袋」よりも、しっかりと足首を固定させている「わらじ」の方が、表現としては的確だからなのです。

「二足のわらじ」と言うのは、わらじの方が足袋や草履よりも安定している履物であり、稼ぎどころが他にもあるとは言え、定職のイメージに近いから。

 

二足のわらじの類語との違い

二刀流

二刀流の意味:異なった二つのものを同時にこなし、どちらも極めていること。

 

「二足のわらじ」とほぼ同じ意味を持ちますが、本来「二足のわらじ」は仕事を両立することだけを指すのに対し、「二刀流」は世間から受け入れられるようなプラスの意味で使われることが多いです。

また現在では、メジャーリーグの大谷選手の功績で「二刀流」という言葉に触れる機会が多くなっており、この場合、職業ではなく技術面での表現をしていますが、バッターでもピッチャーでもチームメイトはもちろん、世界から多大の評価を受けていますね。

 

兼業

兼業の意味:本業の空いた時間に・余裕のある時に別の仕事をすること(副業)。

 

「二足のわらじ」が両立し難い仕事を受け持つのに対し、「兼業」は片方の職業や二つともアルバイト・パートなど割と役目が軽めな立場のことを指します。

また、「二足のわらじ」とは違い、兼業は本業と同じ業種であるなど、業種が自由のことも意味します。

たとえば「飲食店を経営しながら、合間にウーバーイーツをやる」という時に使う言葉として、意味合いからすると「二足のわらじ」より「兼業」が適切でしょう。

 

補足として、現在は大企業でもこの「兼業」を公認しており、いまや「兼業」は誰でも当たり前の時代になってきています。

 

パラレルキャリア・パラレルワーク

パラレルキャリアの意味:複数の職場で働いていて、すべてが本業であること。(複業)

 

「パラレル」は複数を意味しているため、3つ以上でも成立しますし、それがすべて本業であることと同時に、また収入が発生しないボランティア・社会貢献なども含まれています。

たとえば、不動産投資家でもありサラリーマンでもあるといった形で、二つとも同じくらい労力をかけている方は「複業」だと言えます。

 

ちなみに「パラレルキャリア」は割と新しい言葉で、初めに提唱したのは、経営コンサルタントであるピーター・ドラッカーです。

ベストセラーになった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でお馴染みの人物ですね。

 

日本では二足のわらじで副業ができる企業はまだまだ少ない現状

副業解禁の企業が増えつつあるも、実は8割の企業が副業禁止となっており、いくつかその理由を紹介していきます。

理由①副業先へ情報漏洩の恐れがあるため。

企業が禁止とする最大の理由がこれにあたり、情報が漏洩してしまうと企業の信用や財産を喪失させることになり、従業員・企業全体に危機が及んでしまいます。

いくら意識して情報漏洩がないようにしていても、どんな形で情報漏洩になるのかが想定不能のため、対策ができません。

 

理由②本業がおろそかになるため

副業によって想定した利益や成果が出ず、企業にとっては売り上げの確保ができません。

また、副業での疲労が本業に影響を及び、小さな失敗やクレームなどが生じ、最悪の場合取り返しのつかない事態にまで発展する恐れもあります。

 

理由③社員の労働時間・健康管理が難しいため

働き方改革の通達もあって、労働時間の見直しやワークライフバランスを徹底する企業が増えました。

健全な職場環境で、安心して従業員を働かせるためにも、企業側は社員の労働時間や健康管理にシビアになってきています。

ここで副業をされてしまうと、管理ができなくなり、せっかくの企業側の努力が水の泡となってしまいます。

 

こうした理由など、企業の安全確保やリスクを未然に防ぐにも、副業禁止をしているところが多いのです。

 

海外の副業事情

国が変わると文化も変わり、副業を条件付きで認めている国が多数あり、諸外国の副業事情は以下の通りです。

アメリカの副業事情

会社の勤務時間外は、契約上個人の自由のため、副業を制限する事ができません。

こうした寛容な労働環境が、日本よりも副業が発展している一因と言えます。

 

ベトナムの副業事情

2012年に国の法律として「副業容認」と定められているため、経済発展の目覚ましいベトナムでは盛んに副業が行われており、18歳以上の正社員で60%以上、副業経験があるようです。

 

イギリスの副業事情

イギリスの副業は、『競業禁止条項』という法で取り締まられており、勤務時間外は個人の自由ですが、副業をする場合、競合企業で働いてはいけないという条件付きです。

副業をする際には、会社の雇用主に報告・許可が必要とされています。

 

ドイツの副業事情

労働時間法では、労働時間を本業と副業の合計1日8時間以内までのうえに、450ユーロ以下の枠内であれば副業が可能。

450ユーロ(日本円で約50,000円)以下しか稼げないので、副業を一部容認している日本の方が働きやすいかもしれません。

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